荒舘康治のこだわり農家さん訪問記!! vol.3
こんにちは!ごちそうナビゲーターの荒舘です。
あまり酪農のイメージがないむかわ町、ここでチーズを作っている方がいらっしゃると聞いてびっくり。「この辺で牧場なんて見おぼえないぞ!」と思いつつ製品を購入してみると、これがまたおいしい!「ASUKAのチーズ工房」と書いてある。
早速アポを入れて向かうと、ありました!町の近くに牧場が。牧草地を抜けていくと小さな工房にたどり着きました。
今回は「ASUKAのチーズ工房」の代表、北川飛鳥さんが作るフレッシュでオリジナリティ豊かなチーズをご紹介いたします。
名前:北川 飛鳥さん 年齢:32歳
むかわ町出身。
実家は町内で乳牛80頭余りを飼育する毛利牧場。幼少の頃から牛舎を遊び場にして育つ。両親の仕事を大変だと思いながらも酪農の魅力に目覚め、酪農学園大学で乳製品加工を学ぶ。
卒業後、業界の先駆者である半田ファームに3年間勤めた後、独立して「ASUKAのチーズ工房」をオープン。母と二人で製造から販売までを切り盛りしている。
【こだわり】
牛乳の味は牧場や季節によって大きく異なります。
しかし消費者に生乳を直接体験して頂くのは衛生面で難しいのです。自分が一番おいしいと思う毛利牧場の牛乳の味わいがダイレクトに出て、誰もが楽しめるものをと考えてフレッシュチーズ作りを始めました。
もちろん原材料は父の牧場の生乳100%です!
海と山に囲まれた豊饒な土壌と農業に絶好の気象条件を持つむかわ町。
飛鳥さんの実家毛利牧場は祖父の代からスタートしました。
ただでさえ野菜がふんだんに採れる畑ですから、牧草や飼料となる穀物も良く育ち、エサはほとんど自家製。飛鳥さんいわく「贅沢な酪農なんです」。搾乳とエサの時間以外は牛舎とパドックを行き来して育つ牛も健康そのもの。なんと生乳の乳脂肪分は平均でも4%を超え、乳固形量も多いそう。
子供の頃友達に「飛鳥ちゃんちの牛乳はおいしいの?」と聞かれても簡単に分けてあげられなかった辛い気持ちが、今、おいしいチーズを作る原動力になっているのです。
飛鳥さんが手がけるチーズは、この素晴らしい生乳の魅力が100%楽しめるナチュラルチーズばかり。
チーズを作る菌が生きているので、購入後も熟成して味の変化が楽しめます。そしてチーズ作りに手間を惜しまないのも飛鳥さんならでは。例えばホエーのみで作るフレッシュチーズのリコッタなどは歩留まりが悪い上に手間が掛かるため多くの工房では作られていませんが、飛鳥さんはリコッタが欲しいという声に応えて受注生産で応じています。
地元むかわ町にとことんこだわるのも「ASUKAのチーズ工房」ならでは。地元産のししゃも醤油を使ったチーズは今や一番人気の商品に成長しました。むかわ産ドライトマトを使ったチーズともども、完成までに2~3年を掛けた自信作です。
1875年(明治8年)、農業を指導するためにアメリカから北海道にやってきたエドウィン・ダン。翌年、彼が連れてきた母牛の乳と子牛の胃袋でチーズが作られました。
これが日本のチーズの始まりだそうです。チーズを作るためには生乳と乳酸菌、そしてレンネットといわれる凝固剤が必要ですが、レンネットは牛の胃袋から採られるため、子牛を一頭つぶしたとの記録が残っています。その後、1903年には函館の修道院で本格的なチーズ造りが始まりました。
優良な生乳が採れる北海道。早くから大手企業が参画して乳製品産業が成長しましたが、個人や農家がナチュラルチーズの工房を興すようになったのは今から40年程前と、割と最近のことです。1970年後半に現在につながる3軒のチーズ工房※が相次いで設立。
ひとつは「カレ」という白カビ熟成タイプ、ひとつはカマンベール専門、ひとつはデンマーク仕込みのハードタイプと、3軒とも異なる個性を持っていました。この第一世代と呼ばれる3軒を皮切りに、道内には数多くのチーズ工房が現れました。
飛鳥さんが学んだ半田ファームさんは第二世代と言われるチーズ工房。第一世代の工房と共に後の世代に技術を惜しみなく伝えると共に、各自がオリジナリティ豊かなチーズ造りに取り組むことで北海道のナチュラルチーズの発展に寄与してきました。
着々と力を付けてきた北海道のナチュラルチーズ工房。2005年には帯広市でチーズの国際会議「コミテ・プレニエ・フロマージュ」を開催。ヨーロッパ以外での開催は初めてでしたが、北海道のナチュラルチーズは参加したチーズ先進国の造り手を唸らせました。
現在、北海道が承認しているチーズ工房・工場は115か所(平成23年度)を数え、飛鳥さんのようにその土地ならではのオリジナリティと腕を競い合っているのです。
※共和町のクレイルさん、芦別市の横市フロマージュ舎さん、瀬棚町の近藤チーズ牧場さんの3軒が北海道ナチュラルチーズ造りの第一世代と言われています。
(参考資料 ホクレン 北海道ナチュラルチーズの本他)
生乳と塩だけで作った熟成させずにすぐ食べるタイプのチーズ。 ASUKAのチーズ工房では塩も使わず、生乳のおいしさがストレートに楽しめるやさしい味わいが特徴。モツァレラ、ストリングチーズ、リコッタを作っています。
カマンベールに代表される表面に白カビを付着させて熟成するタイプ。購入後も熟成が進み、時間が経つ毎に濃厚な味わいとなります。ASUKAのチーズ工房では塩分濃度を押さえた「カマンベール」と、欧州で好まれる塩分高めの「雪の音」の2種類を用意。
表面にカビを付着させて3ヶ月から半年という長時間熟成させたタイプです。スイスのトム・ド・サボワをお手本に、お湯を加えずに発酵させる「はじめのチーズ」は濃厚な味わいが魅力。熟成期間が長いほど濃厚なコクが楽しめます。
- 荒館)
- こんにちは。むかわ探訪記の荒舘です。
- 飛鳥)
- まずはこちらのカマンベールを
食べてみてください。 - 荒館)
- わあ!中がとろっとろですね。
これは濃いですね。牛乳を煮詰めたような風味。塩気もありますね。 - 飛鳥)
- はい。ヨーロッパで作られているものに近い 塩分で作った「雪の音」です。実は今日が 賞味期限なんですよ(笑)
- 荒館)
- なるほど!一番熟成しきっている状態なんですね。 熟成期間ってどのくらいの日数なんですか?
- 飛鳥)
- 製造してから42日目です。塩分が気になる方は 通常の「カマンベール」がおすすめです。 次は「はじめのチーズ」をどうぞ。 セミハードタイプです。
- 荒館)
- いや、これも濃厚な味わいだなあ。
このタイプってもう少しあっさりしていると 思っていました。 - 飛鳥)
- そうですね。ゴーダチーズなどですと温度管理の
ために生乳にお湯を入れるんですが、スイスで作られるトムというチーズは
直接生乳を加熱して作るんです。
ものすごく気を使うので普通はそんな事しない んですが、味はとても濃厚になるんですよ。 - 荒館)
- いや、びっくりしました。
どれも一級品じゃないですか!そのししゃも 醤油を使ったチーズってどうなんですか?
(ひとつ口に入れて)あ、ししゃもの香ばしさが 残っていておいしいですね。 後味にさっとししゃもの香りまでします。 - 飛鳥)
- これ、すごく苦労したんです。
せっかく地元の食材を使ってもおいしくないと 意味がないですから。
完成までに2年も掛かりました。
おかげさまでうちのNo.1ヒット商品です。 あと、今日は地元のトマト「リンカ」を使った チーズが売り切れてしまって…ごめんなさい。 - 荒館)
- いや、食べなくてもわかりますよ(笑)
チーズとトマトは鉄板コンビですから。
トマトのリコピンと合わさって旨みが出るん ですよね。それ、あとで買いに来ます。
- 全ての製品は毛利牧場で生産された、乳脂肪分年間平均4%以上という高品質生乳から作られているので、生乳の持つ自然のコクが生きています。さらに乳牛を育てる牧草とサイレージまで100%自社牧場産という徹底振りこそが、ASUKAのチーズ工房を支える最大の秘密です。
- ASUKAのチーズ工房で作るカマンベールチーズは全て後工程で殺菌しない「生」タイプ。乳酸菌が生きているので購入後も熟成が進み、保存日数によって異なる味わいを楽しめます。ただしフレッシュタイプは鮮度が命なので、開封したら即食べ切るのが原則です。
- ASUKAのチーズ工房は飛鳥さんとお母さんのふたりで製造から販売までを行っています。人手がなくて大変だけど、自分たちが納得するまで存分に手間を掛けられるのが良いとのこと。敢えて難しい工程や面倒な工程にも挑戦する姿勢が、本物の味を支えています。
チーズのこととなると、どんどんアイデアが出てくる飛鳥さん。ちょっといじわるに、「チーズって毎日食べますか?」と聞いてみると「食べますねぇ~」と屈託のない返事が返ってきました。
その内容がまた、すぐに真似をしたくなるような「まかないネタ」の嵐!本当に美味しそうに話すんですよ。さっさと仕事やめてワインとチーズの宴をしたくなってしまいました。彼女を中心に日高のチーズ作りが進んだら面白いだろうなぁ!
フレッシュタイプや白カビタイプは白ワインと。 セミハードタイプの熟成が進んだものは軽めの赤ワインにもしっかり合います。同じ発酵食品ということもあり、実は日本酒にもぴったり。おいしく楽しむことができます。
チーズはフルーツとの相性も抜群なのです。 特にフレッシュタイプはフレッシュジュースと 合わせることでちょっとしたデザート替わりに!
上記にもあったようにチーズとフルーツは相性バツグン!
スライスした梨の上にモツァレラをのせたり、パンの上に柿をのせ、チーズでカバーしてからトーストしたり、定番のトマト以外でもいろいろな美味しさが発見できますよ。
季節のフルーツが無いときは手近なジャムと合わせるとオリジナルスイーツのできあがりです。
実はチーズは、はちみつとも相性バツグン!
はちみつがけのチーズはワインはもちろん、ウィスキーにも良く合います。
フレッシュタイプチーズの賞味期間は2~3日。
「食べ切れないと思ったら、どんどん料理に使ってください」と飛鳥さん。
ストリングチーズならサラダにのせたり、トーストにのせたり。加熱すると糸を引くので、ハンバーグにのせても喜ばれます。セミハードタイプならカレーやシチューに入れるとコクとまろやかさがアップ!レストランの味が楽しめます。
飛鳥さんのチーズ造りの原点は、ご両親が経営する毛利牧場の牛乳のおいしさを伝える事。
子供時代、農家の子なら「うちの野菜おいしいから食べて」と言えるのに、自分はそう言えないもどかしさ。
飛鳥さん自身が「最高の牛乳」と呼ぶ毛利牧場の生乳の味わいや特質を生かしながら、手間をいとわずにチーズに仕立てていく。その過程のひとつ一つに彼女の思いの強さを感じました。地元への愛情の深さにも感動!
「コラボしても、おいしくないと意味がない」と試作と試食を繰り返す姿は、若くして本物のプロの姿そのものでした。
ASUKAのチーズ工房6種詰め合せ3,800円(税込)
むかわ町の特産品である「ししゃも」のダシを効かせた「ストリングししゃも」、冬季期間には「雪だるま」の形をした「モツァレラ」、そして「カチョカバロ」、「ストリング」の6種類の詰め合せをギフト対応箱にてお送りいたします。
|
|
モツァレラ・わたげ 100g430円(税込)
おだやかで新鮮な風味で、軽い甘みと酸味が感じられるチーズです。トマトと相性抜群です。
|
|
カマンベール 160g860円(税込)
食塩1.8%のカマンベール。食べやすいチーズなので、ティータイムにオススメです。
|
|
雪の音 160g920円(税込)
ワインに良く合う、白カビタイプのチーズです。カマンベールに比べ、柔らかく濃厚な香りが特徴です。
|